子育てに腹をくくるー家庭教師の仕事を続けて

校舎内から外を見る小学生の背中

新潟の夏は湿度が高く今日も台風の影響でとても過ごしにくい1日でしたが、今年の夏は猛暑と言う言葉がピッタリ来る夏になり、毎日過ごしにくい日が続いています。

新潟はお盆が過ぎると秋の気配が漂い出す年が多いのですが、今年はまだまだ暑い夏が続きそうな予感がしています。

そんな猛暑の夏、新潟の小学生、中学生、高校生たちはどんな夏休みを過ごしている事でしょうか?

受験生は「猛暑だから。」とは言っている訳には行きません。日々1つ1つ過去の勉強の確認をして、基礎の穴を埋めるための夏として大事にして欲しいと思います。

受験生以外の子供たちには、勉強も大事な事ではありますが、それぞれの学年で1度しかない長期間の休みの夏休みを色々な事に取り組んだり、野に山に出て、今しか出来ない掛け替えのない体験を1つでも多くして欲しいと思います。

山と青空

家庭教師の仕事を続けて27年。これから家庭教師の仕事を続けて28年目に入ります。たくさんのご家庭、たくさんの子供達と勉強に取り組んで来ました。

20代の頃の私の感覚は、親御さんや子供達の期待に応えて、ただただ勉強を教えたい。得点を伸ばしたい。学力を伸ばしたい。そんな気持ちが全てだったように思います。

そうして日々を過ごしながらいつしか自分にも子供が生まれ、また50才と言う節目を超えて、その気持ちは、少し、いや、かなりと言いますか、感覚的に変化があるように思います。

勉強する事は確かに大事な事です。その考え自体に変化はありません。勉強する事は知識を得る事と同時に自分の取り組み如何で結果を掴む事が出来ると言う貴重な成功体験を積む事ができます。誰もが平等にそのプロセスを経験することが出来て、そこから自分の可能性までをも信じる事が出来る可能性を持つと言う貴重な経験です。

若い日の私は、それを教える事こそが自分の仕事だと考えて仕事に取り組んでいました。

その私が家庭教師の仕事を続け、そして子供が出来て、齢50を超えて今思う事。それを今回はお話しようとこの記事を書いています。

子供達には色々な性格の子供がいます。色々なタイプ、色々な考え方、色々な適正。それこそ10人十色で、どう言う道が正解であるかなど、それこそ神様でもない限り分かりようが無い。それが真実だと思います。

家庭教師を続け勉強を教えながら、子供達へのアドバイスを考える時、この10人十色はいつも私には大きな問題でした。

全ての子供に『勉強は大事』『だからしなさい。』と言えば子供達1人1人に通じるほど簡単な話ではないからです。

子供達の人生を輝かすために大事な事は、勉強はとても大事な事ではありますが、現実には勉強だけで全てが片付く事ではありません。これは当然の話ではありますし、今も昔もその感覚は変わらないと言えば変わりませんが、家庭教師の仕事をしていると親御さんからの勉強への心配や期待も手伝って勉強を教える事が私たち家庭教師の仕事になっていました。

ですが、家庭教師の仕事をすればするほど、子供の人生を輝かすために必要な経験は、様々な経験全てが勉強を含めて等しく大事な事に思えてならなくなっています。

子供達の人生を輝かすためには、勉強よりも子供達の人間的な成長が最も大事な事だと今更ながら強く思うようになりました。

私が家庭教師の仕事を通じて知り得た事は、その子供1人1人、性格や人間性や感性、人間的な成長度に合わせて、それぞれの子供に必要で不可欠な様々な通過点があり、その経験を通じて成長して行く事と同時に、勉強も様々な経験と同時にバランス良く失敗や成功を経験して行く事が大事で、親御さんを中心にしながら学校の先生や私たち教育に携わる者が子供を人間的に育てて行く事が最も大事な事なのだと思っています。

勉強の前に『子育て』こそが最も大事な柱にすべき取り組みで、「勉強が出来るれば人生がある程度上手く行く。だから勉強を頑張りなさい。」と言ったような、勉強が出来る出来ないを中心に子供たちを育てずに、個々に合わせた助言を考えなくてはならない。と言う事をとても感じています。

教室の風景

YOMIURI ONLINEで後藤卓也さんと言う方の「小6で成績が下がり始める理由」と言う記事の中にこんな話がありました。

『偏差値の高い学校』や『我が子を一番伸ばしてくれそうな学校』は、中学受験における(ひとつの)『目標』であって、『目的』ではありません。

 中学受験の本当の目的はひとつしかないのです。それは、『自分で、自分のために学ぶことのできる子』『自分で自分の人生を切り開いていける子』『勉強すること、受験に挑戦すること、成功することや失敗することをすべて自分の人生の糧として受け止められる子』を育てること、つまり『子どもたちを親離れさせ、自立させること』なのです」

この記事は中学受験を考えられている親御さんへのお話なのですが、勉強する事の目的が分かりやすいお話なのでご紹介しましたが、勉強や受験の目的は「良い高校に入る」事が目的なのではなく「自分の人生を切り開ける力を育て自立し親離れさせる」事が目的だと話されています。

私はこのお話に強く同感しています。勉強する事の目的は人としての成長が目的であり、高校や大学、または偏差値が目的ではない。と言う事です。

私は人間的に成長するために、子供達には勉強は勿論の事、それぞれの子供達の成長具合に合わせて様々な経験が必要なのだと感じています。

これは私が27年家庭教師の仕事をして50を超えて今思う子供たちに話をする大人が心に留めるべき大事な感覚だと思います。

バレーボール練習・試合風景

家庭教師の仕事をしていると様々なご父兄との出会いがありますが、勉強する事で良い進路を得る事に対するこだわりが強過ぎるためか、勉強する姿勢や結果に対しての評価で子供さんの能力や可能性を見るようになってしまっている親御さんがいらっしゃいます。また「勉強しなさい。」と勉強に積極的に取り組まない様子を見て、ついついお説教を日常的にしてしまう親御さんとも数多くお会いして来ました。

子供さんがその親御さんのその感覚を感じてしまう事で、親御さんの心配とは裏腹に子供は勉強にやる気を無くしがちになっていて、親御さんの勉強への心配が逆効果になっている事は少なくありません。

勉強への心配の底には、子供さんの将来への心配があるからなのですが、私には勉強できる出来ないだけで子供達の将来を過度に心配し不安に思う必要はない。と感じています。

家庭教師として勉強を教える立場の私がこんな話をすると違和感を感じる方もたくさんいらっしゃると思いますが、過度な心配や不安が子供に伝わり子供達が自分の生きる未来に明るさを感じなくなる事。それが子供達が育つ上で1番の問題になるように思います。

大人は子供たちを育て独り立ちして幸せを掴んでもらうためにこそ先輩としての役割があるのであって、勉強をすれば子供は独り立ちして幸せになってくれると勉強へ過信をせず、『子供を育てる』事にこそ大人の役割を見つけるべきと感じています。

子供達の身近な場所にいる大人の役割は、子供達のそれぞれの個性から、その子供達の良い所を理解し、指摘し、その上で未来を共に考えたり助言したり、後押ししてあげる事が最も大事な役割なのだと思います。

その上で勉強の大切さを話す事も大切であり、社会で通用せず子供を苦しめるであろう悪い点を教えたり悟す事が大切なのだと思います。

家庭教師を続けて子供達に勉強する事の大切さの話をする機会から、段々とこうした感覚が生まれ、今の考えに至りました。

2人の子供を育てる1人の父親になった事でより明確になったような気がしていますが、子供達へ向き合う大人の意識として子供達の人生を過度に心配する前に、自分の役割を考え理解して、どんな性格や感性や能力の子供だとしても、将来向き合う事になるであろう壁を子供が1人で乗り越える勇気を持たせるために、まず、その子供の良い所を見つけ理解し、その良さを伸ばす事を考え、様々な経験の場を考え提供したりしながら、共に悩み考え子供に寄り添う存在になる事が大事でなのであり、子供の人生は子供の物と腹をくくって、心配し過ぎずに見守りながら、いざと言う時には後押ししてあげれるような存在を目指さなくてはならない。それが大人の役割のように思います。

なんだか相当理想的な立場で、とてつもなく人徳を磨かねばならないような壁のような話ですが、完璧にそうである必要はなく、そうした感覚や考えが根底にあれば、子供には良いシグナルやメッセージを私から出してあげられるような気がしているのです。

子供達の人生を大事に思う親の気持ちは一緒です。その出し方使い方1つなのだと思います。

子供達は経験する事で自分で何かを知り何かを見つけて行きます。受験や社会での試練のような目の前に壁が出来たとしても、それを乗り越えるのは子供本人です。

その壁を乗り越えるための勇気は、自分を信じる気持ちなのだと思います。自分を信じて挑戦し、成功や失敗を経験して次へのチャレンジの糧となります。

1人1人の人生には全く同じに過ごせる人生はありません。自分だけの壁を乗り越えながら人生を子供達は生きて行くのです。

親御さんや学校の先生、また私たちのような家庭教師、子供達の周りの大人は自分たちの役割を考え腹をくくって『子育て』と向き合い様々な経験の場を作り、またたまには考えさせたり、一緒に悩み、それぞれの子供の様々な壁を乗り越える経験を応援したり、助言して経験値を積ませながら、1人1人の個性を尊重し育てようとする事が、子供達への本当の教育になるのだと思います。

親の考え方や子供達への教育の向き合い方は子供達が大人になる過程で大きな影響を与えます。

ですが気負う必要はありません。『子供達の人生は子供達のものなのです。』

もし、この記事をお読み下さって確かにと感じる所のある親御さんがいらっしゃるようでしたら、ご自身の役割を振り返って下さって、私たちの想像出来ない未来を生きて行く子供達のために、未来に灯る光を一緒に探す事の出来るお父さんお母さんになって下さればと思います。

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